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連続小説

グループ

「うーん、それなら・・・
予定とか確認したいんで、後で連絡してもいいです?」

「おっけーおっけー。
水曜日くらいまでには連絡してくれると嬉しいかな、色々準備とかもあるからね」


これといった予定がある人間ではないのだが、突然仕事になる場合があるので私はこう返事をしたのだ。
普段は休日出勤はほぼないが、ごく稀に、それも何らかの予定があるときに限って打ち合わせで取引先に出向だとか講習会だとか出勤させられることがある。


「水曜日ですか、わかりました」


そういう事を言われるのは決まって月曜日のミーティングなので、水曜なら問題ない。


「じゃあ、水曜までにメールしますね」

「メールなんです?
SNS使ったらいいじゃないですか。
まだ交換してないですよね、しましょ」


紙袋と一緒に持ってきた大きなカバンから、派手な装飾を施したスマートフォンを片手にしてツキコが言う。


「ええと、私、スマートフォンじゃないんですよ・・・」

「えー!
不便くないですか?」

「特にそう感じたことはないですね・・・
あまり連絡する相手もいないので」


言っていてなんだか悲しくなる。
交友が多い人間を前にこういう事を言うと、自分があまりに内向的で暗い人間だという事を強く感じてしまうのだ。
これ以上突っ込んで聞かないで欲しいと私は思った。
それを察した南野が間に入り、ツキコを止めた。


「世の中にはいろんな人がいるからね。
私の知ってる人にもガラケーを使ってる人は多いよ。
今からスマホの操作を覚えるのが面倒だって人もいるし」

「そうかもしれないですけど、でも不便ですよ。
グループチャットも見られないんですよ?」

「そうかもしれないけど、でも本人の自由もあるから」

「あの、グループチャットって?」


聞きなれない言葉に私は2人の言葉を止めた。
ツキコの言うSNSは知っている、周りでも使っている人が多いし若い子たちは仕事の連絡なんかもそれでしているようなのだ。
私のイメージでは、手軽にできるメールという物だった。
それにグループが付くという事は複数人でできるという事なのだろうが、メールで言う一斉送信みたいなものなのだろうか。


「仲間内でいつでも連絡が取れるように、SNS内でグループを作ってるんだよ。
ほら、こんな感じ。
うちのイベントの連絡をしたり、写真を上げたり、情報交換をしたりしてるんだ」


南野はポケットからスマートフォンを取り出し軽く操作すると、画面を私の方へと向けた。
真っ青な背景の上に、多様な丸いアイコンから吹き出しで囲われた文字が並ぶ。
きっとこのアイコンによって、話している人物が違うのだろう。
見ている画面の話題はとあるアイコンが新しい服を買ったと画像を上げたことだった。
そこにはハルとユメとはタイプの違う、アニメっぽい髪型のラブドールが可愛らしくも際どいまるでアイドルのような服装をして椅子に座って居る画像があった。
他のアイコンたちがそれに対し、思い思いの感想を述べている。
ひとつだけ別の位置にあるアイコン、これはおそらく南野本人なのだろう。
彼はひたすら称賛していた。
見ていると、ピコンという音と同時に新しい文章が上がった。

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