雲の上への扉

判断材料の一つ

「一体式と着脱式だと、やっぱり値段も違ったりするものなんですか?」


私はふと疑問に思い、南野に訊ねた。
今まで趣味もなくただ淡々と仕事だけしてきた私にとって、そこが決め手になるということはないのだが、ただなんとなく気になったのだ。


「値段は、そうだなぁ・・・ホールの違いで大きな差はないかな。
まぁ、着脱式だと別のホールを使ってみたくなったときにホールの購入代金は掛かるけどね。
もしかして、安い方で試してみようとか思った?」

「いやいや、そんなつもりは!
ただその、ホールが別な分安くなったりするのかなってふと思っただけで」


私はなんだかさもしい事を聞いてしまったようで、恥ずかしくなる。
別にプライドがあるわけではないが、貧乏性だと思われるのが嫌なようだ。
心の中にもやっとしたものが込み上げる。
ここはもう少し何か言うべきだろうか。
だが、言えば言うほど言い訳だと思われるのではないだろうか。
私が狼狽えるのを見て、南野が笑い出す。


「ははは!
まぁ、それも判断材料の一つだと思いますよ。
でもね、あんまり参考にはならないかも。
ドールの値段はピンキリだからね。
ホールの種類に関係なく、本体価格として安い子もいれば高い子もいるんですよ。
あと、着脱式の子は最初からホールが付属してくることがほとんどなんで、ホールが付いてないから安いなんてのはないかな」

「そうなんですね」


からかわれたのだろうか、それともそんなに気にしなくてもいいと場を和ませるための笑いだったのだろうか。
どちらにせよ、心の中でいろいろと言い訳を準備していた私は何も言わなくてよかったのだとほっとした。
まさかこの男に金持ちだと思われたいわけではないが、必要な所には金を惜しまないつもりでいるのに安いものを欲しがっているように思われるのはやっぱり嫌だったのだ。
ラブドールに対しても、そのつもりなのだから。


「メーカーや販売店によってはホールタイプを変更できるところもあるんだよ。
その為の加工をしなければいけないから、時間は掛かるみたいだけどね」


ひとつ聞けば倍の情報が出てくる男だ。
遠慮してしまって自分から多くを聞けない私には、とてもありがたいことだった。


「まぁでも、2体目とかならあれだけど、初めてならホールはそんなに気にすることもないと思うよ。
どっちも良い所も悪い所もあるし、迎えてしまえばそれもまたその子の個性だから結局は好きになると思うしね。
何事も最初から完璧って物はないんだし、そういうものって馴染んでいくものだと思うからね」


最初からあれやこれや気にしてもそもそもラブドールもオナホールも使ったことがない私には比較する対象がない。
できるだけ良いものをという気持ちはあるが、南野の言う事も一理あると思った。

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