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連続小説

いいですね

「あっ、これ、なんだろう」

「大丈夫大丈夫、誰かが何か言ってるだけだから」


慌てる私を南野はそう言って落ち着かせた。
それから彼はスマートフォンの画面を覗きこむ。


「ってこれ、ツキコちゃんじゃん」

「いえす」


ツキコは自分のスマートフォンの画面をこちらに向けた。
そこには南野の物と同じような内容が表示されており、一番下にさっき突然現れたイラストのような物が表示されている。


「ツキコさんが送ったんですか、このイラスト?」

「です。
これはスタンプ」

「絵文字みたいなものかな。
これひとつで感情の表現ができるんだ。
いろんな種類があって、好きなのを購入して使う」

「へえ、なんだか色々できるんですね」


こうして実際に人がやり取りをしているのを見るのは初めてで、ただただ感心するばかりだ。
確かに彼らの言う通り、このSNSと言うのは便利そうである。
一緒に居なくてもまるでそこにいて会話しているような、そんな感じに思える。


「東谷さんもスマホに変えて、SNSしましょうよ。
楽しいですよ」

「うーん、そうだなぁ。
変えようと思ったことはあるんですけど・・・」


スマートフォンに変えようと思ったことは何回かあるが、いつも店頭で引き返してしまう。
どれも同じに見えてしまうのだ。
その度機種のカタログをもらうのだが、見てもいまいち何が違うのか、どれがいいのかわからず決めかね、次の季節には新しい機種が出てしまい変え時がわからない。
スマートフォンは難しそうだとかどうせ電話しかしないからガラケーで十分だとかそれは建前で、実際機種変更をしないのはそんな理由だった。


「もし使い方がわからないとかなら私が教えますよ。
基本的な使い方とかアプリならわかりますし」

「私もそれなりにわかるから、なんでも聞いて。
わからなくても調べれば大体は一発だからね」


南野は自信があるという表情でスマートフォンを構えた。
何処までも面倒見のよい人たちだ。


「それならいい機会だし近いうちに変えようかな」


彼らに後押しされると、心が動く。
あまり自分から動くことのない私だが、実はきっかけがないだけで新しいことが嫌いと言うわけではないのだ。


「いいですね。
スマホだとカメラ機能も良いから、ラブドールを買ったら撮影にスマホを使えますよ。
撮った写真をそのままネットにアップもできるし、それを見るのもスマホでオーケー。
絶対持ってて損はないですから」

「それはいいですね」


ツキコの熱い一押しに、私はスマートフォンへの機種変更を決意した。
これからラブドールも購入しなければいけないし出費は痛いが、必要経費だろう。
そういえば私はカメラを持っていないのだ。
きっとラブドールを購入したら写真を撮りたくなるだろうし、性能の良いカメラを使えるのであれば悪くない出費だと思える。

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