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連続小説

今がそのタイミング

何事もタイミングという物は難しいものである。
見極めるなんて烏滸がましいことを言うつもりもそんな芸当ができる心当たりも無いが、それでも最低限不自然にならず、そして相手の妨げにならないように自然に会話に入るというのが理想である。
確かに、待っていればいずれは話を振ってはもらえるだろう。
だが、それに甘んじてはいけないのを私は知っていた。
と言うのも、話の最中に外れている者に声を掛けるというのは気遣い以外の何物でもないからだ。
決して悪いことではない。
だが、それに甘えていつも話を振られるのを待っていては、話をする気がないと思われてしまう可能性がある。
そうして今まで話に入り損ねて気遣われた結果、職場や実家ではすっかり聞き役のような扱いになってしまったのだ。
ここではそうなるわけにはいかない。
私は今がそのタイミングだ、と思った。


「仕事の誘いって、2人はその時初めて会ったんですか?」


話を聞いていて気になったことを聞いてみる。
少し違和感がある言い回しだった気もするが、大丈夫だろうか。


「いや、初めてではないんだ。
何回か話はしてたし、SNSの繋がりはあったしね。
ツキコちゃんがバイトをクビになったって話を人伝に聞いて、それなら是非うちで雇いたい!と思ってイベント後に声を掛けた時の事なんだけど」

「知り合いって程でもなかったような。
顔見知り、ですかね」

「えー!?
何度か話したことはあったしメアドも交換してたじゃない!」

「そうでしたっけ」


私の質問に対する南野の答えを、ツキコが冷たく訂正する。
察するにそれはただ認識の違いなのだろう。
どこまでが顔見知りでどこからが友人かという定義は人それぞれだ。
思うに南野は数回話をすれば相手を友人と言ってしまえるようなタイプで、ツキコは冷静に相手との関係を判断するタイプに見える。
だから何となくだが、状況がわかる気がした。
元々認識が違うのだから、これはどうしようもない。
私は敢えてそこには触れないように話を続けた。


「その前から知り合いだったんですね。
てっきり初対面でって話だと思いましたよ」

「流石に私も初対面の人を一緒に仕事しよう!なんて誘わないよ!
やっぱりある程度どんな人かを知ってからじゃないとね」

「ええっと、面接的な物ではなかったんですか?」


頭の中ではすっかり仕事の面接的な様子が出来上がっていた私は、ここで一旦ここまでの話を思い返してみた。
そう言えば、誘ったのは南野の方だと言っていただろうか。
とすれば、どういう事だろう。
南野はツキコを紹介するときにビジネスパートナーと言っていたが、それがここで関係してくるのだろうか。
ぐるぐると思考するが、2人の話を聞いていただけで実際の状況を知らないのだから仕方がないのだが、所々噛みあわない所があった。

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