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連続小説

可愛いじゃない

南野はそう言うと難しい顔をして指先でこめかみを押さえた。
私ももう一度想像してみるが、やはりイメージが固まらない。
それどころか、説明されればされるほどわからなくなるのだ。


「ええと、うーん、すみません・・・
あまりイメージが湧かなくて・・・そもそも外に出ることがあまりないもので」

「いやいや、こちらこそいい表現ができなくて!
まあ、そういうのがあるって話。
私も主催をやったりしてるから、そのうち良ければ東谷さんも参加してくださいよ。
実際見てみるのが一番早いと思うし」


もしかしてとは思っていたが、やはりそうだったかと私は思った。
ここまで見聞きしてきたことから考えても、南野が主催側で絡んでいないわけがない。


「はは、機会があれば是非」


彼が主催とあれば、全く初心者の私でもあまり気兼ねせず参加できるかもしれない。
そもそもあまり出掛けない私は人が多い場所があまり得意ではないく、独りでそういう場に足を運ぼうとは思えないが、知り合いが居るならそこまで抵抗はないだろう。
そういった場で他の所有者の話を聞けるというのにも興味があった。


「近い所で何かあれば良かったんだけど、しばらくは無いんだよねぇ。
次あーいうのがあるとしたら間違いなく決まってるとこだと夏かな。
後でペーパー渡しておくね。
で、話の続きだけど」


テーブルの上に広げられた紙を手早く確認すると、南野は「やっぱり持ってきてないか」と言った。
その紙の山に何があるのか、すべてを把握しているわけではないらしい。
きっと、役に立ちそうなものを適当に掴んできたのだろう。
今すぐ必要という物ではないから、彼は「後でね」と言って話を続ける。
話が終わる時には忘れていそうだな、と私は思った。


「当時はまだ私もちゃんと働いてたし、ラブドール業界でそういったイベントはなくてね。
それでもこういう事がしたいっていうイメージはあって、どんなものか勉強しようと思ってイメージに近いイベントとかに通っててさ。
あ、もちろんドールにも興味はあったよ?
ラブドールに限らず、人形って可愛いじゃない。
まあ、イベントの運営とかドール関係の技術とか、ラブドールに絡む部分の動機が大きいんだけどね」


南野は「カスタムドールはアトリエ・・・あ、作業室ね。そっちの方に居るよ」と言った。
アトリエがあるという部分も気になるが、私はそれよりも彼がその時のことを当時と言ったことの方が気になってしまっていた。
もう何度か仕事を辞めて今の活動をしているという話は聞いたが、それが具体的にいつなのかは聞いていないのだ。


「なるほど・・・
当時って、結構前なんですか?」

「いやいや、ほんの数年。
ここ2~3年前ね。
実はうちのサークル、まだまだ若いんだよね」

「そうなんですか!
なんだか、長くやっているものだと思い込んでいましたよ」

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