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連続小説

全く素人な私

クローゼットから出た私は南野に促されるままこの部屋に来た時と同じように机の椅子に腰かけた。


「ええっと、こんな質問をするのはなんだけど、東谷さんはオナホールって使ったことはあります?」


突然の突っ込んだ質問に私はどぎまぎする。
それがどこから出てきた質問なのかはわかる。
実際に使ったことはないが、そう言った知識が希薄な私でもラブドールとはそういう物の延長にあるものだからだということは察することができる。
しかしなんというか、こう面と向かってそう言った話をするのは少し抵抗があった。
だがだからといって今ここで恥ずかしがっても仕方がないということはわかる。


「そういう物があるということは知っているけれど、実際に使ったことはないですね」


私は正直にそう伝えた。


「なるほどなるほど。
使ったことがあれば話は早かったんだけどね。
まぁ、使ったことが無くてもなんとなく知っているとは思うけど、自慰に使う人工的な穴の事ね。
さすがにここで私が使っているのを見せるのはいくら東谷さんとの仲とは言え抵抗があるから現物を見せるわけにはいかないかな」


南野は自分の発言がツボに入ったのか軽快に笑う。
潔癖と言うほど気にする性分ではないが、確かに彼の言う通り、そう言ったことに使用されているものを見せられるのはあまりいい気がしないだろう。
こんな機会だから実際のオナホールを見てみたいような気もしたが、私は頷いた。
それを確認すると、南野は立ち上がり私の後ろにある机の引き出しから一冊の冊子を取り出しそれを広げて私に手渡した。


「でも何もなしじゃイメージが湧かないと思うから、こんなものがあったりする」

「これは・・・」


冊子には肌色の筒の写真が使用感を星の数で表したレビューと共に載せられていた。
全く素人な私には違いがいまいちわからないが、一緒に写るパッケージを見た感じどれも違うもののようだ。
外観の写真があるのはわかるが、どうやって撮ったのか断面の写真までもがすべてに付いており、とても詳しいもののように見えた。


「ラブドール愛好家で尚且つ特にオナホールに熱を上げている有志がラブドールに装着できるホールだけで作ったカタログ。
なかなかこれだけの物はないよ。
通販サイトで見るよりすごく詳しいしね」

「これも作ったものなんですか」


私は感心した。
この人たちの行動力はどうなっているのだろう。
南野が作ったというあの写真集に比べ、ページ数や紙質などは劣るがそれでもしっかりとした冊子である。
また、素人の私が見ても内容がかなり濃いものだとわかる。
この冊子を作った者もまた、よほどこの世界に浸かっているのだろうと私は思った。

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