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連続小説

真面目なんだなぁ

しかしそう考えると、着脱式も悪くないのかもしれない。
もしもホールとの相性が悪ければ別を試すこともできるというのは、初めての私にはとてもいい条件だろう。
始めは一体型の方がリアリティがあっていいのではないかと思ったのだが、さっき南野が言った通り、それもまたラブドールとしての個性なのではないかと考えを改めたのだ。
何も、すべてがリアルじゃなくていいじゃないか。
そんな部分まで自分好みにカスタマイズできるなんて、ラブドールならではだ。


「そう言われると、着脱式の方がいい気がしますね」

「ははは!
まぁ、私は着脱式の方が好きだし人に勧めるのもこっちかな」

「ふむふむ」


私はこのことをメモしておくため手帳を取り出そうと、胸ポケットに触れた。
仕事の時の癖だ。
仕事の時は聞いたことや言伝なんかを忘れないようにこまめにメモを取るようにしており、仕事着の胸ポケットにはいつも小さな手帳を入れているのだ。
しかしもちろん、私服のそこには手帳はない。


「あー、っと」

「ん?
どうかしました?」

「いや、つい仕事の時の癖で。
メモしておこうと思ったんですけど、そう言えば私服だったなと」


私は誤魔化し笑いを浮かべながら、頭を掻いた。


「ふむ、ちょっと待ってくださいね」


南野は立ち上がると目の前の机の引き出しを上から順番に漁り出す。
メモ紙を探してくれているのだと、すぐにわかった。


「あっ!大丈夫ですよ!
お気になさらず」

「いやいや、確かこの辺に・・・
あ!あったあった」


私は気を使わせてしまったと慌てて声を掛けたが南野は聞かず、3段目の引き出しの奥から白いブロックメモを取り出すと半分くらいのところでそれを分けて、机の上のペン立てから取り出した普通のボールペンと共に私に差し出した。


「こんな、悪いですよ」

「気にしないでください。
どうせ使わないでずーっと机に入ってたものだしね。
せっかく東谷さんに使ってもらおうとちぎったんだから、使ってくださいよ」

「それじゃ、ありがたく」


差し出された物を私は感謝しながら受け取った。
模様やロゴも一つもないまっさらな地の飾り気のないそれは、きっと新品に近かったのであろう。
手に取ったブロックメモは結構な半分でも厚みがある。
渡されたのは分けた下半分、台紙の方だった。
もしかしたら、手に持ったままでも書きやすいようにと気を使ってくれたのかもしれない。
これは使わないわけにはいかないだろう。
私は早速そこに、脱着式と書いた。
もし忘れてしまったとしても、これがあれば後で思い出すことができる。


「メモを取られるなんて、話した甲斐があるってものだよ。
まぁ、メモをするほどのことでもないと思うんだけど」


南野は開けた引き出しを元に戻し「真面目なんだなぁ」と笑いながら言うと元の位置に戻った。

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