雲の上への扉

ニラ玉

玄関を入るとコンロひとつ狭い流し台ひとつ調理スペースなしのちょっとしたキッチン。
その向かいにはバストイレ一体型のバスルームのドア。
短い廊下の先には家にいるときの大半を過ごす我が家の中で一番広い空間であるリビングがあり、右手にはベッドと衣類を収納するためのタンスでいっぱいいっぱいな四畳半の寝室。
収納は少ないが単身用の最低限の設備が備わったこじんまりとしたこの築三十年弱が社会に出てから十数年過ごしている私の家だ。
社会に出てからというもの大半の時間を仕事が占めてしまうため、ここで過ごす時間は短い。
ほぼ寝るためにあると言っても差し支えないくらいの場所である。
故に家具なんかも少なく全体的にさっぱりとした空間であるが、それがどうにも辛気臭い。
住み始めた当初は白かったリビングの壁はカーテンを閉め切っているにも関わらず薄生成り色に日に焼けて部屋のそれを増長させている。


「さて・・・
とりあえず、なんか飲むか」


リビングに置かれた冷蔵庫を開ける。
中はそれなりにものが入っている。
元々備え付けの冷蔵庫がキッチンの流し台の下にあるのだが缶ビールを6本も入れれば埋まってしまう程度の小さなものだった。
住み始めはそれでも使っていたが、単身とはいえそれでは何かと不便だったのだ。
料理を好んでするわけではないが、時間があれば自炊はする。
独り暮らしは何かと金がかかるため、少しでも安く済む自炊は必須である。
しかし自炊するとなるといろいろと入用な訳で、冷蔵庫は冷凍と冷蔵に分かれた2ドア式のそこそこのものを置いていた。
狭い廊下には置ききれずリビングに置いているが、飲み物が欲しい時なんかに廊下に出る手間が省けるためそこそこ気に入っている。


「ああ、昨日の残りのニラ玉があった」


私は買い置きの缶ビールと昨日作ったニラ玉を取り出した。
一人分の料理を作るというのはどうしても難しいものがあるため、それなりの量を作ってはそれを冷蔵庫に入れて2日3日に分けて食べるのだ。
冷蔵庫の上の電子レンジにニラ玉を入れて、600Wでダイヤルを少し回す。
去年頃それまで使っていた古い2ドア式の冷蔵庫が壊れたため、店員に勧められるまま冷蔵庫の上に電子レンジを置ける天板の冷蔵庫を買ったのだが、これは当たりだった。
棚の上にあった電子レンジが冷蔵庫の上に移動したおかげで、ずっと気になっていた床に直置きしていた炊飯器が棚の上に納まり見栄え的にも衛生的にもとても良くなった。
神経質、というほどではないとは思うが、そういうことが気になる性分だ。
炊飯器のことは自分でもよく何年も我慢したと思う。
まぁどうにもしようがなかったということが大きいが。

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