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連続小説

サークル

「何から話そうかな・・・
うーんと、そうだね。
名刺を渡した時にサークルだって話はしたよね」

「そうですね」


私は頷いた。
渡された名刺にあったドールルーム南野の文字を思い出す。
確かにその時、彼は会社ではないと言ったのだ。


「その、サークルっていうのがよくわからないんですが。
会社とは違うんですよね、そう言っていたし」

「うんうん。
まぁ、個人事業として登録はしてあるんだけど、収入がほぼないからね」

「ふむ」

「趣味の延長って感じでね」


南野は少し興奮した様子で早口に話す。
どうやらこの男は自分のことを話すのが好きらしく、次々と話したいことが溢れて止まらないようだ。
思えば、ここに来てからずっとこんな調子だった。
私が口下手で聞き手に回ることが多いこともあり、ほとんど南野が話していたのだ。
彼の話は興味深いものが多く退屈はしないのだが本題から離れてしまうことが多い。
困ったことに反れてしまった話題の方も気になってしまうのだから、結局聞きたいことは聞けず、話が進まないのだ。
この度も本題には近いものの若干ずれつつある会話だったが、先ほど注意されて以降ここまで黙って聞いていたツキコが言葉を続けようとする南野を手で遮った。


「社長、東谷さんはそういう事を聞きたいわけではないのでは?
もっと具体的な、活動内容とか最近やったこととかの方が聞きたいと思うのですが」


示し合わせたわけではないのだが、ツキコが私に変わって思っていたことを彼に告げた。
自分で言い出せないことを変わって言ってくれたことは有り難いのだが、まるで心を読まれたようで私はドキリとする。
そのミステリアスな風貌のせいなのだろう、彼女にはそんな力があるような気がしてしまうのだ。
しかし今南野が話していたことに興味があるというのも嘘ではない。
本筋から少し外れているとはいえそもそもサークルというものがいまいちよくわからない私にとって、前置きとも取れるその話は聞いておいて損はないものだったのだ。
もっとも、今後彼らに関わっていけば自然とわかっていくことなのかもしれないが。
もしツキコが本当に心を読んだのであれば、そういった部分も汲み取ってくれただろう。
彼女はこんな身なりをしているが、意外と気が利く人間だとここまでのやり取りでわかっている。
そんな彼女が口を出したということは、寧ろ私の心を読んだというよりきっと南野の話が遠回りで面倒くさかったのだろう。
そっちの方が心を読まれたという説よりもしっくりくる。
そう考えると私はなんだかおかしくなってしまい、つい口元が緩んでしまう。


「おっと、失礼」


緩んだ口元から空気が漏れて音を立ててしまい、私は慌てて口元を手で押さえた。

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