トップページ > もくじ > そうでしょう!

連続小説

そうでしょう!

「ラブドールと一緒に出掛ける人って多いんですか?」


ふと気になり、私は訊ねた。
そこに居るハルとユメ、彼女たちは私よりは小さいとはいえそれなりの大きさがある。
家で楽しむだけならいいが、連れて歩くのは色々と難しいことが多そうだと思ったのだ。


「うーん、どうだろう。
私の周りには出かける人が多いけれど、ほとんどの人は家から出さないだろうね。
人目もあるし、彼女たちは自分で歩けないから移動に制限もあるし」

「そうですよね。
公共の乗り物は目立つだろうし・・・」

「まぁねぇ。
最近はそういう趣味があるってこともそれなりに知られてきたけど、まだまだ一般的ってわけではないからね。
公共の乗り物は・・・使わない人が多いかな。
中には使う人もいるけどね。
前に新幹線を2席分取って、一緒に乗って来たって人がいたよ。
でも、大体は車かな。楽だしね」


流石の南野も、そういった現実的な問題はやはりわかっているらしい。
寧ろ、ラブドールの所有者だからこそ感じているのかもしれない。
少し寂しげな表情で、彼は顔の前で手を組んだ。


「そういう問題があるからこそ、私は交流会を開いたり講習会をしたりしているんだよ。
ラブドールとのお出かけは楽しいものだからね。
特別な思い出になるし、自慢のラブドールを他の人に見せるチャンスだし」

「なるほど」

「あ、そうだ。
前回の交流会の写真、見る?」

「ぜひ!」


私が返事をすると南野は立ち上がり自身の後方の棚からスタンドのようなものに立て掛けられていたタブレット端末を取り出した。
タブレット端末を手にした南野は画面に数回触れるとそれを私の前に置き、元の椅子に腰掛ける。
置かれた端末には画面いっぱいに画像のサムネイルが表示されていた。


「7月の連休に知り合いのペンションを借りて1泊の交流旅行をしたんだ」


南野が画面に触れると画面いっぱいに写真が表示される。
そこには年齢も雰囲気も違う20人ほどの男女が白木で作られたお洒落な建物の前に並んでいた。
前列の女性は椅子に座っており、よく見るとラブドールのようだ。


「この時の参加者は8人。それと私とツキコちゃんとペンションのオーナー。
ペンションのオーナーもラブドールのご主人様でね、ほら、この右から3番目のセーラー服の子がオーナーのラブドールだよ」


そう言って彼は画面に触れないように指を少し浮かせた状態で、写真の中を指差した。


「へえ、この子も可愛いですね」

「そうでしょう!」


自分のラブドールではないのに、南野は何故か自慢げに返事をした。
この男はラブドールならどの子も愛おしいのかもしれない。
それと、純粋にラブドールを褒められることが嬉しいのだろう。
南野は目を輝かせ今にも語り出しそうな様子だった。
ここままではまた彼のペースに持っていかれてしまうと思った私は、すかさず次の質問を投げた。

<< 話を続けようか          着せかえ人形 >>
トップページへ

PAGE TOP