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連続小説

初回無料

「これ、良かったら参考にどうぞ。
持って帰ってゆっくり見てみて。
あ、あくまでも貸すだけだから、後でちゃんと返してね。
一冊しかないのもあるからさ」

「え、いいんですか?」

「もちろんもちろん。
ここじゃゆっくり見られないでしょう?
私もついつい口を挟んでしまうしね。
1週間でも2週間でも、返すのはいつでもいいからさ、じっくり考えてみて。
でも、汚すのは無しね」


最後のは冗談だ。
彼のにやけ顔がそう言っていた。
南野の申し出はとても有り難いものだった。
ここでなら確かに一から十まであれやこれや南野とツキコの話を聞くことができるだろうが、そればかりでは決定に影響が出てしまうかもしれない。
それどころか、あっちもこっちも良い所を説明されて勧められ、目移りしてしまい決めることすらできないかもしれない。
こういう事にはやはり、一人でじっくりと吟味する時間が必要なのだ。


「いや、助かります」

「いえいえ。
こちらとしてもね、新しい仲間が増えるのは嬉しいからね。
少しでも助けになればいいんだけど。
こっちの冊子は私の知り合いの業者さんが扱ってるものなんだけど、もしここでいい子が居たらこのURLを見てみて。
あ、そうそう。
胸の大きさとか最初に付いているウィッグの色、あと肌の色なんか選べる場合があるからね。
そういう部分も気を付けてね」


南野は重ねた冊子を上から順に横に移動させ、説明する。


「こっちは大手販売メーカーなんだけど、人気の子なんかは予約待ちだったりするからもしこっちで気になる子が居たら早めに相談してくれるといいかも。
割り込みとかはできないけど、再入荷時期とか調べてあげられるからね。
あと、こっちは海外メーカー。
それからあと、こっちの冊子は最近仲間内とか私が運営しているラブドール専用SNSで投稿された画像なんだけど、もしこんな感じの子がいいってのがあれば、言ってくれれば同じ系統の顔の子を探すこともできるよ。
あ、ここからだけじゃなくて、芸能人なんかで好きな顔があればそういうのでも。
素体の顔はちょっと違ってしまうかもしれないけど、メイクでなんとかなるって場合もあるからね。
そうなるとツキコ先生の出番」

「初回メイク直し、無料です。
ついでにスキンケア付き」


南野が話を振ると、ツキコは忙しく頭を上下して頷いた。


「2回目からは有料、もしくはメイク講座に参加して自分でお直しできるようになってね」


ちゃっかりと自分たちの活動の宣伝も挟む。
元々ラブドールを迎えたら参加しようと思っていたのだ。


「あの、例えばですよ。
迎えたドールの顔は元々気に入っていたけれど、メイクが落ちてきてしまった。
そういう場合も1回目のメイク直しは無料になるんですか?」


図々しいとも思ったが、ツキコにメイク直しをしてもらえるというのは魅力的である。
今左右に居るハルとユメの顔の完成度はまさに芸術で、自分のラブドールにもそんなメイクを施してもらえるならと思ったのだ。
もちろん、そこに対して対価を惜しむつもりは始めからない。
だが、貧乏性の私はどうしても初回無料という言葉が気になってしまったのだ。

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