雲の上への扉

等身大

私の想像していたのは取扱店へのリンクだったのだが、予想に反し、開いたのはメールの入力フォームだった。
件名、メールアドレス、名前、本文が分けて記入できるようになっている。
どうやらそれは注文用というわけではないようで、上部には感想、リクエスト等ありましたらお送りください、写真集のご注文もこちらからどうぞと書かれていた。


「今すぐ注文したいってわけでもないしな」


残りのビールを一気に飲み干し、私はそのページをそっと閉じた。
パソコンは完全に落とさずデスクトップ画面を開いたまま立ち上がり、日が完全に落ちて暗くなった部屋の電気を点け明かりを灯す。
寒々しい白色の光に照らされたフローリングを踏み、冷蔵庫からビールを取ると元の場所へ戻り、それを開けた。


「すごかったな」


何の気なしだったが、ぽつりと口からこぼれていた。
今まで感じたことのない気持ちが胸を満たしており、どうにも落ち着かないのだ。
それはあの画像たちのせいか、それとも自分の知らない世界に触れたことによるものなのかはわからなかったが、もっと見たい、深く知りたいという欲求のようなものが渦巻いていた。
そういえば、あの人形たちが観られるのは何も南野のサイトだけではないのではないだろうか。
私は、パソコンでインターネットを開いた。
南野の人形はとても魅力的だったが、すべての人形がそうなのだろうか。
あの男が特別手をかけ、仕上げたからこそ惹きつけられるのだろうか。
私はいろいろな人形を見てみたくなったのである。


「えーっと確か、ラブドール、だったか」


南野のサイトに書かれていた注意書きにあった言葉を思い出す。
聞きなれない言葉だが、彼女たちの総称なのだろう。
私は検索エンジンでラブドールと検索した。
画面に記事が一覧で表示される。結構な数がある。


「これは・・・」


私の目に留まったのは一番上に表示されたウィキペディアの記事だった。
そういえば私はラブドールというものが具体的にどういうものなのかを知らない。
左クリックで記事を開く。
そこに書かれていた事実に、私は驚愕した。


「ダッチワイフ、なのか・・・」


ラブドールを知らない私でもこちらは聞いたことがある。
しかしイメージがあまりにも違い過ぎる。
実際に見たことがあるわけではないのだがイメージの中のダッチワイフというのはいかにも性具という印象なのだが、公園で見たあの人形はそんな雰囲気は一切なかったのだ。
私の中でのラブドールのイメージは等身大の着せ替え人形だったのである。

しかし今更、性具という事実を知ったところで私の興味が衰えることはなかった。
私は既にラブドールに魅入られていたのだ。
寧ろ、自分好みのドールを抱けるということはプラスにも思えた。

前の記事へ          次の記事へ
トップページへ

PAGE TOP