雲の上への扉

とても有り難いもの

ここまで黙っていた私だったが、自分でも自分の好みがわからないということを正直に打ち明けることにした。
彼らには誤魔化すようなことでも隠すようなことでもないと思ったのだ。
簡潔にそのことを伝えると南野は優しく微笑みツキコはぽかんと口を開けた。


「そっかそっか、それならそうだね・・・
この辺とこの辺がいいかな」


南野は頷きながらテーブルの上に拡げた冊子の中からしっかりしたものを1冊と厚みのない簡単な中綴じを1冊とチラシを数枚取り出し私の方に置く。


「好みのタイプがあるなら近い子を紹介しようと思ったんだけど、そういう事なら色々見られた方がいいと思うから、総合的な物をいくつかね。
あんまり多いと迷うと思うから、最近のものだけだけど。
これは私のとこが作った一覧で、こっちはメーカーの冊子でこっちの紙はネットの卸売店のページを印刷したもの」


ひとつずつ指を指し南野が説明する。
私は最初に彼が指さした冊子を手に取った。


「これも作ったんですか」


お洒落な服を着た数体のお洒落なラブドールたちがそれぞれ異なるポーズをとって集合している賑やかな表紙。
じっくりと見たいが今は写真を観ることが目的ではないからと私はそれを捲る。
最初のページには全裸で壁にもたれる様にして立つラブドールの写真と共に導入、購入を検討する人への挨拶のようなものが書き綴られていた。


「ええ、もちろん。
活動の一環なんですが、こういうのあると便利でしょう?
どんな子がいるのかもすぐにわかるし、色々と見比べたりできるからね」

「なるほど、確かにこういうものがあると助かりますね」


私はパソコンでラブドールの事を調べてみた時の事を思い出した。
沢山の販売サイトやブログそれから大手通信販売サイトの商品ページなどいろいろと出てきてしまい、全く素人な私はどこで購入するべきかもわからなかったしついさっき見たページを閉じてしまいもう一度見たいと思ったドールを再び見ることができなかったりと困難があったのだ。
私がパソコンに疎く慣れていないということも悪いのだろうが、それを引いてもこの冊子は私のようなラブドールの購入を検討している人間にはとても有り難いものだろう。


「それにしても、個人でこんなふうに本にまでしてしまうなんて、やっぱりすごいですよ」


オナホールの時のあの冊子といい、南野といい、この界隈の人はこういうものを作るのが好きなのだろうか。
二階で見せてもらったあれもまた丁寧に纏められていた。
今手元にあるこの冊子も、あれに負けず劣らず見やすく丁寧に纏めてある。
私はただただ感心していた。
これが企業などのプロの人間が仕事の一環で作ったものであれば、ここまで関心はしないだろう。
もしかしたら彼らはそういう経験があるのかもしれない。

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