雲の上への扉

幼少期の想い

私には年子の姉が一人いる。
今となっては姉も嫁いでしまい年に一回盆に実家に帰ると顔を合わす程度だが、小学校くらいまではそれなりに仲もよく部屋も共同で玩具なんかも別けておらず、同じ箱に仕舞われていた。
私は男の子ということで車や怪獣なんかの所謂男子用の玩具を与えられており姉は女の子らしくおままごとや人形を持っていたのだが、実を言うと私はその頃から、自分の持っている玩具よりも華やかな服がたくさんある姉の着せ替え人形に興味があったのだ。
しかしそれは姉のお気に入りでもあり、なかなか触らせてもらうことができなかった。
当時はそれは悔しい思いをしたものだ。
姉は贔屓目に見てもセンスがいい方ではなかった。今でこそ落ち着いてはいるものの当時は独特の色彩感覚や発想で大人たちの度肝も抜いていたのである。
鮮やかな原色の派手な衣装を好み、大雑把に人形の髪を編み上げるのを見てはもどかしい思いをしていたものだ。
しかし女の子の玩具を親にねだることは男の子である自分には恥ずかしくてできず、何度かこっそり姉の居ない間に隠れて遊ぶ程度だった。
姉が居ないほんの少しの時間は、実に心が躍ったものだ。
箱に無造作に放り込まれた人形を掘り出し衣装の詰め込まれたお菓子の缶をひっくり返す。
輪ゴムで留められた髪を解くのはなかなか大変だったが、丁寧に解し撫でつけ整えてやり、姉があまり着せることのない可愛らしい淡い色のふわふわした洋服を着せてやるのだ。
そして最後にその小さな足に服に合う色のゴム製のハイヒールを履かせて完成させる。
そうすると姉に扱われていたのとは同じ人形とは見違えるほど良くなり、私はそれを元に戻すことができず結局姉に見つかってしまい、最終的には力技で追い払われるのだった。

今思えばそう、子供の頃からそうだったのだ。

私は深く息を吐いた。

このラブドールなら、私の欲求を満たすことができる。
自分好みの服を着せ、それに合わせて髪を整えることができるのだ。

私は心が揺らいだ。

ウィキペディアにも書かれていたが、ラブドールは高価なものである。
金がないわけではないが、もし想像と違った場合かなりの痛手だろう。
そう言った大きな買い物をするとなると、そう安易に購入に踏み切れるものでもない。

しかし、そこで諦めるには足を突っ込み過ぎていた。
短時間だったが見てきたブログの数々、公園での出来事、それらが私を離さなかった。
私も自分だけのラブドールを手に入れたい、そう思うには十分すぎたのだ。


「どうするかなぁ・・・」


私は蛍光灯の光で照らされた薄灰色の天井を仰ぎ見た。
そこに答えがあるわけではないが、ただ一度パソコンから目を離したかったのである。

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