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連続小説

有志の努力

ツキコの様子も気になるが、考えても仕方がない。
ツキコも何も言わないし、南野も気にする様子がないからきっと気にしない方が良いのだろう。
私は自分をそう納得させた。
きっとそのうち、ツキコもまた何食わぬ様子で会話に参加してくるだろう。


「遠慮しないでいいからね」


優しい笑みを向けられ、私は頷いた。
それを確認すると、彼は話を続けた。


「そんな感じで、当時はツキコちゃんはそっちの方ではちょっと有名な人だったんだよ。
ネット上は勿論イベントとか交流会にも参加しててね、初めて私がツキコちゃんに会ったのは個人主催の交流会」

「個人主催ですか?」


私はさっそく質問をしてみることにした。
そういったイベントという物がどういう物かはっきりとわかっているわけではないのだが、何となくイメージとしては公式なもの、例えば販売や製作をしている会社、もしくはイベント会社なんかが開催しているというイメージがあったのだ。


「うん、個人主催。
私らのやっているようなことって公式で大々的に何かをやるってことがほとんどないんだよね。
カスタム系のドールはそれでもまだある方で、ラブドールだと全くない。
どっちかというと個人的な物というか、秘めているものだからね。
ラブドールは今でこそ有志の努力の甲斐あって外でいろいろできるようになったけど、当時は同じドール界隈でも嫌煙されていたからねぇ」


南野は過去を懐かしむよう、遠い目をしてしみじみと言う。


「等身大ってちょっと敷居が高いんだよね。
性具ってイメージもあったし、今でこそ等身大フィギュアとかが出てきてようやく一部で受け入れられたような感じ。
それでもまだ、白い目で見られることも少なくないけどね。
今でもドール系のイベントではラブドールは別ジャンル扱いみたいなものだしね。
っと、ごめんごめん、脱線しちゃった」


私に聞かせるというよりも、まるで独り言のように自分の話を淡々と発し始めた南野だったが、ふと我に返ったように話を元に戻す。
止めなかった私も私なのだが、別にその外れてしまった話を聞くのも嫌ではなかったのだ。
というか、そちらはそちらで興味深かったし、これからそちらの世界に足を踏み入れようとしている者としては、他人事でもない様な気がした。
しかし今はその話が主題ではない。
だから私は何かを言って話が膨らんでしまわないよう、ただ無言で頷いた。
すると南野はまるで何事もなかったように話を続けた。
こういったことに慣れているのだろう。


「まぁ、イベントって言ってもそんなに大きなものじゃないよ。
主催者が何処かに場所を借りて、人集めて・・・ね。
内容はその時によって少し違ったりするんだけど、同じ趣味の人が集まってあれやこれや語ったり自分が作った物を売ったり、うーん、何に例えるのが一番しっくりくるかな・・・ちょっとすぐには浮かばないな・・・」

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